結婚が嫌で逃げてきた聖。
結局その婚約者の叔父であるハーレムと特戦部隊の家に聖は居候することになった。
成り行き上ではあるが。
そんな彼女のために翌日歓迎会が行なわれることになった。
うわ〜どきどきする
急いで食器類を洗い、身支度を整える。
歓迎されるからには何かおしゃれをした方がいいかとも思ったが、普通でいいと言われたので少し整えるだけにした。
「遅せーぞ!」
「ちょっと待って」
ハーレムが痺れを切らしてきたため、彼女は早めに切り上げる。
「うわ〜」
大きく開けた所にでると、すでにリキッドたちが待っていた。
大きい垂れ幕には聖さんようこそと書かれている。
「ようこそパプワ島へ!」
「あ、ありがとう」
聖は驚きながら大きい目をぱちくりさせる。
「聖ちゃんちょっと・・」
「何?」
リキッドが小声で聖に話かける。
「昨日あの後大丈夫だった?」
「・・まぁね。心配してくれてありがとう」
リキッドはその返事にひとまず安心する。
先ほど会った時に無事を確認したが、やはり不安なのだ。
昨日心配で寝付けず、目の下にうっすらと隈が出来ていた。
「何が大丈夫だって」
「げ、隊長!」
「リキッドもっと酒もってこい!」
ハーレムはリキッドの首根っこを掴むと特戦部隊を連れ、酒のある所まで行ってしまった。
聖はそんな彼らを見た後、周りを見回した。
住人は生物が多いと聞いていたが、彼女にとっては驚くものばかりだ。
実際に言葉を喋る動物などオカメインコなどは見たことあるが、ここにいる住人は大きなミミズや鳥といった生物や他にも変わった生物がいるのだ。
「なんかすごい・・」
聖が関心していると、後ろからに何かの気配を感じた。
「あなた結婚が嫌で家出してきたんですってねぇ〜」
「しかも、恋人を期限つきで探すんですってねぇ〜。燃えるわよねぇ〜」
カタツムリと網タイツを着た鯛。
聖はその姿を見たとたんに返答に困った。
多少顔も引きつっている。
「こいつらはイトウくんとタンノくんだ」
困惑している聖に、パプワが二匹のことを説明する。
どうやらカタツムリの方がイトウで網タイツを穿いている鯛の方がタンノらしい。
しかしくんと言うからにはイトウはともかく、タンノは雄なのだろか聖は疑問に思った。
「同じ乙女同士仲良くしましょうね」
「今度乙女話でもしましょう」
笑顔でそれだけ言うとイトウとタンノは去っていった。
乙女・・
聖は唖然としてた。
今まで勉強をしてきたが、常識では考えれらないものもあるのだと考えを改めざるを得ないと聖は思った。
「お嬢さんが日本から来た方かな?」
今度は羽織を着た中年の男に話かけられる。
男は他に三人、少年と青年と屈強そうな人物を連れていた。
刀を横に差し物騒である。
「・・そうですが」
恐る恐る聖は返事をする。
目がどうしても刀に向いてしまうのを抑え、顔を男の方に向ける。
「これはこれは。私お隣に住む心戦組の局長近藤イサミです」
「どうもどうも神宮寺聖です。始めまして」
相手は深々と頭を下げ、挨拶するのでこちらもつられて挨拶をした。
心戦組・・
昨日の話では自分にとっての許婚の名は危ないかもしれないと思い、伏せることにしようと思った。
イサミは礼儀正しく見えるが、後ろの男たちはどうかわからない。
「ほら三人とも挨拶しなさい」
近藤が促すと、後ろの少年と青年の二人は面倒臭そうにしている。
「副長の土方トシゾーだ」
「一番隊組長の沖田ソージ」
「十番隊組長の原田ウマ子じゃ」
一通り説明される。
しかし聖には腑に落ちない部分がある。
「あの〜ウマ子さんは女性ですよね・・」
聖はウマ子をよく見た。
昨日の話ではウマ子は女性だと聞いていた。
彼女には失礼だが、どうしてもウマ子が女性には見えない。
「そうじゃけん」
「こう見えてもウマ子は女子高生です」
近藤の発言に驚き言葉を失くす。
まさかウマ子が自分と年が近いというのも驚きである。
「だから同じ年頃の女性であるあなたに会えるのを楽しみにしてたんですよ」
「!」
楽しみにしていたと言われ、ドキっとした。
そう言われては悪い気はしない。
「よろしくじゃけん」
ウマ子から手を差し出される。
「よ、よろしく・・」
聖はそろそろと手を差し出した。
手を握ると、ウマ子が微笑んだので聖も微笑んだ。
「よかったなウマ子」
近藤はその様子を見て感動している。
「そういえば聖はこの島で恋人探すんじゃろ?」
「この島でっていうか・・なんというか・・」
ウマ子に突拍子もなく突然言われ、聖は顔が羞恥で赤くなる。
そこまで広がっていては恥ずかしいのだ。
「リッちゃんは無しじゃからの。リッちゃんはわしの大事な人じゃけん」
そういうとウマ子は恥ずかしそうにリキッドのいる方向を見る。
「今猛烈に嫌な言葉を聞いたような・・」
その頃リキッドはハーレムたちにつまみを作れと言われ、急遽つまみを作っている最中だった。
「まだかリキッド!」
「はいはい・・」
いつになったら下っ端人生抜け出せるんだろ・・
「リキッド君はお兄ちゃんみたいなものだよ」
聖はニッコリと言う。
実際にリキッドのことは、近所の遊んでくれる優しいお兄さんという感情しかもっていない。
「そうか・・。いや別にそれならええんじゃ。お互い恋にがんばろう」
「・・うん」
この島に来てから女の友達が出来るのは聖にとって嬉しいことだ。
今までこっちの性格では友達を作ったことがなかったので余計である。
「じゃあの、聖」
「うんじゃあね」
それだけ言うと、心戦組も酒のある方へと向かった。
「ねぇねぇ聖さん」
「ん?」
声が下の方に聞こえ、首を下に向ける。
可愛い・・
そこにいたのは、カンガルーネズミのエグチと洗熊のナカムラだ。
「君たち名前は?」
聖の体は何故かぷるぷる震えている。
「僕はエグチ。こっちはナカムラくんだよ」
二人が挨拶すると、聖は二人の頭を撫でた。
「・・か、かわいい!」
「うわっ!」
二人は聖に抱きかかえられる。
「可愛い!」
彼女は二人の可愛さに、頬擦りした。
聖はこういう可愛い小動物に目がないのだ。
「くすぐったい〜」
エグチとナカムラもお返しとばかりに頬擦りをした。
「気の強いお嬢様も可愛い動物には目がないんだな」
「むっ」
聖が夢中になり二人と戯れていると、後ろからハーレムが話しかけてきた。
酒を存分に煽っているようで、少し酒臭い。
酔いも周りハーレムの目は聖をからかっているように見えた。
「別にいいだろ」
聖は頬を少し赤くし、ハーレムを睨む。
「まぁいいんじゃない。可愛いんじゃないの〜。美少女と胸キュンアニマルの図は」
ロッドはそういいながらウインクをする。
「たまにはな」
「・・ああ」
彼女は何だか恥ずかしくなり、エグチとナカムラに視線を移す。
「聖さん顔真っ赤〜」
「真っ赤〜」
「ガーン。エグチくんとナカムラくんにまで・・」
二人にまでからかわれ、聖は軽くショックを受ける。
しかも、特戦部隊の皆にも笑われた。
聖は穴があったら入りたい状態だ。
「お嬢さん俺たちもいかがです」
「今なら安くしとくにょ〜」
聖の前に現れたのは怪しげなきのことドラムのスティックを持ったラッコ。
「え〜と遠慮しておきます」
彼女が拒否をした瞬間・・。
「オショウダニスウィング!」
「ギャー!」
オショウダニが投げたスティックが聖の脳天に当たる。
当たった部分からは若干血が噴出している。
「聖さん大丈夫?」
エグチとナカムラが血を拭う。
「何すんだよ!」
聖は痛さより怒りが上回っていた。
聖は痛さを押さえ、エグチとナカムラを置き二匹の前に立つ。
「まぁまぁ、落ち着くにゃ〜」
「乙女の顔に傷を食らわせられて落ち着いてられっかー!」
聖が怒りでコモロとオショウダニに攻撃しようとした瞬間、コモロが怪しげな胞子を聖に撒いた。
あれ・・なんかふわふわする・・
意識が遠くなり、周りが白く包まれる。
よくみると、顔は見えないが男のシルエットが浮かんでくる。
誰・・
疑問を抱え、自分の姿を見ると今自分が着ているものはウエディングドレス。
周りは教会。
参列者の中に父の誠司と母、兄たちが見える。
相手の方を向けばタキシード姿・・。
「ああ。あなたが旦那様〜」
「・・・」
「そうとうトリップしちゃってるぜ・・」
聖がトリップして抱きついている人物。
それはハーレムだ。
聖は幸せそうな顔でハーレムに抱きついている。
ちなみに元凶のコモロたちはすでに姿を消していた。
「どうするんですか・・」
彼女が意識を取り戻せばこの状況に怒り狂うだろう。
「何してるんですか隊長!」
「ちょうどいい所にきたリキッド。どうにかしろ!」
リキッドはあの後ウマ子に追われ、ようやく振り切り戻ると今度は聖に問題が起きている。
コタローとパプワ、チャッピーが後からやってきた。
「たぶんコモロくんにやられたな」
「そうだね・・」
とりあえずリキッドはハーレムの腕から聖を引き剥がそうとする。
「いや〜」
「いやって・・」
引き剥がそうとすると聖は嫌がって余計に離れない。
「リキッド。ちょっとどけ」
「マーカー?」
マーカーは彼女の後ろに回ると、彼女の首を後ろからぽんと叩いた。
「っ・・」
彼女は力が抜けて倒れそうになる。
「危ね!」
ハーレムが彼女を何とか受け止める。
「とりあえずは気絶させておきました」
「案外荒療治だね・・」
そのままでもしばらくすれば元に戻るのだが、それではハーレムが困ることになる。
マーカーはそれを察しこの行動に出たのだ。
「・・ん」
フレグランスの香り・・。
酒臭い・・。
聖がゆっくりと目を開けていく。
目の位置はハーレムの胸板・・。
ゆっくりと上に目線を上げていく。
「なっ!」
聖にはこの状況がどうなっているのか理解できなかった。
なぜ自分がハーレムに抱きしめられているのか。
「目覚めやがったか」
「・・離して!」
聖は顔を真っ赤にしながら、ハーレムから離れた。
「これはどういうこと?」
彼女はだいぶ混乱している。
先ほどのことは覚えていないのだ。
「お前があのコモロの胞子でトリップして俺に抱きついてきたんだよ」
・・・
想像していなかった事態に、聖の頭はパンクしそうになる。
「う、嘘だ!」
彼女の顔は火が吹きそうなほど真っ赤だ。
「嘘じゃねーよ。いきなり旦那様とかってな♪人の腕に抱きついてきて乳当たってたんだぞ」
「っ!」
先ほどの幻覚のことを少しずつ思い出す。
「う・・う〜」
もう半泣き状態だ。
幻覚を見ていたとはいえ、男の人に自分から抱きつくなど・・。
「・・ほら幻覚にかかっていたんだし・・」
リキッドが必死で慰めるが、聖はその場に縮こまった。
「お前なぁ〜。そんなことぐらいで落込んでんじゃねーよ」
「五月蝿い!これも全部あのきのことラッコのせいだ!絶対とっちめてやるんだから!」
そういうと、彼女はポケットにしこんであった水晶をだした。
「何するんだ?」
皆が注目する中、聖は不敵にニヤリと笑った。
「あたしから逃れようなんて10万年速いんだから」
彼女は水晶に手を当て集中した。
「!」
「た、隊長!」
彼女の目が左目は赤く、右目が青く光る。
まさか秘石眼・・?
「見えた!」
ハーレムたちが見ていると、彼女の瞳は元に戻り近くにあった木の棒を投げた。
「ぎゃー」
ヒットして倒れたのはオショウダニとコモロ。
聖はゆっくりと彼らの元に近づく。
「覚悟できてんだろーな・・」
悪魔の微笑み・・。
「ぎゃー!」
歓迎会はその後夕方まで行なわれ、終わった後は聖はリキッドに貰った材料を活かし料理をしていた。
料理が作り終わるまでハーレムたちは酒を飲んでいた。
「隊長・・。あの娘は何者なのでしょうか・・」
「わからね・・。あの眼、秘石眼にも似ているっちゃー似ているが・・」
普段の聖の瞳は茶色。
日本人にありがちな色の瞳だ。
しかも黒髪。
青の一族に黒髪の子は生まれない。
「第一秘石眼だったら隊長みたいに金髪で秘石眼っしょ」
ロッドの言う通りだ。
青の一族ならばそのように生まれる。
ハーレムやサービス、グンマ、キンタロー。
それに両眼とも秘石眼のマジックとコタロー。
彼らは全員金髪に青い瞳の秘石眼を持っているのだ。
「あれが予言の力か・・」
マジックがシンタローの許婚にしたのが、その理由だとすれば頷ける部分がある。
「どっちみちまだわかんねーし今は飯だ!」
「・・そうですね」
今は結局考えるだけ無駄だということになる。
「聖、飯まだかー!」
ハーレムが大声で呼びかける。
「後少し!そういうなら手伝ってよ!」
彼女が文句を言うと、ハーレムは聞こえない振りをした。
しばらくして聖が料理を運ぶ。
「うまそ!」
「食うぞ!」
「頂きます」
その日はそして過ぎていった。
島での歓迎。
新たな友達。
彼女の謎を残しつつも過ぎていく。
終り
後書
パプワ夢小説です。
今回ハーレム多目ですね;
多分この主人公でストーリーを書く場合はハーレムが多くなると思います。
多分他はキンタローやロッド、マーカー、高松やサービス、シンタローとか。
なんかいろいろ書いていくんでよかったら見ててっていただけると嬉しいです。