「はいどうぞ」
そう言って店員の女性から渡されたのは二枚の短冊。
二人はそれを見て今日が何の日かを思い出した。
本日は7月7日の七夕。
今日は春日家と有川家で食事をするために、買い物に商店街へ来ていた。
商店街では七夕の飾りで溢れていた。
商店街を歩くと、子どもたちが小さな笹の飾りを持っているのがよく見えた。
二人はせっかくだからと、商店街の中央に飾られている笹に短冊をかけることにしたのだ。
笹にはすでに他の人の願いが書かれた短冊があり、彼氏と上手くいきますようにや健康でいられますようにと書かれたものがあった。
「お願いごと何にしよう」
望美はピンク色の短冊を見て、願いごとを考えていた。
「将臣くんはもう書いた?」
「まだ」
将臣もどうやら迷っているらしく、ペンをくるくるとさせながら青い短冊と睨めっこをしている。
「願いが多すぎて迷うな・・。もっと綺麗になりたいし。大学受験も無事合格したいし。健康も大事だし」
望美の願いは言えば言うほど溢れ出す。
しかも短冊は一つしかないので、せっかくなら一番叶えたい願いを書きたい。
「お前欲だらけだな」
望美の様子に将臣は可笑しくなり笑った。
「じゃあ将臣くんは?」
笑われて少しふくれっ面になった望美に話を振られ、将臣はう〜んと唸る。
「そうだな〜。大学は俺は大丈夫だろ。ルックスも問題ないし」
「自分でいう?」
望美が呆れたような顔をする。
確かに将臣は要領もいいため大学進学も問題ない。
ルックスもいい方だ。
だが、自分で言うのが望美には腑に落ちないのだ。
「あとは・・。望美にもうちょい色気がでること?」
「余計なお世話よ!」
望美は顔を赤くし、将臣を叩いた。
「怒るなよ。悪かった」
将臣は悪い悪いと手を合わすが、顔は笑ってて全く謝っていない。
「将臣くんの馬鹿」
「はいはい」
望美はもう将臣は放っておいて、願いを何にするかに集中した。
願いか・・
二人が考えこむと、ふいにどこからか何かが横切る。
黄色と黒。
揚羽蝶
「向こうのやつら元気かな・・」
将臣の口から思わず零れた言葉。
揚羽蝶を見て平家の人々を思い出したのだろう。
「朔たちも元気かな」
望美の心の中にも今まで旅した源氏の面々が浮かんでいた。
八葉の皆。親友の朔。そして白龍。
「あ、願い思いついたかも」
望美がそういうと短冊に書き出した。
向こうの世界の皆が元気でありますように。
「ふ〜んいいんじゃないのか。じゃあ、俺も」
望美の短冊を見ると、将臣も同じように向こうの皆のことを思う願いを書き込む。
「それにしてもせっかくの七夕の日にカップルっぽい願いを俺たち書かないのな」
将臣は望美と思わず笑った。
「だって皆のこと大切だし。将臣くんだってそうでしょ?」
望美は将臣の方を向く。
「まぁな」
「それにね・・」
望美は少し顔を赤くし、将臣に耳打ちした。
織姫と彦星はこの日しかいられないけど、私は将臣くんとずっと一緒にいるから。
望美の言葉を聞き終え、将臣はふっと笑う。
「当たり前だろ」
終り
久々の更新です。しかも一日遅れですみません。