バレンタイン・デーに祝福を 

 

2月14日。この日は、ある意味女子たちの戦いであるバレンタインである。

望美にとっても例外ではない。しかし、今年は違う。

晴れて、恋人同士として将臣と付き合うことになったのだ。

学生として復帰した将臣たちが、このことを友達に告げた時の反応といえば・・。

「今更?」

「つ〜か遅すぎ」

「えっ!」

周囲から見れば、元々将臣が望美に恋愛感情を持ってたのはバレバレであった。

望美の方も好意を抱いていたのは判っていた。それでも告白してくる者はいたが、二人は誰とも付き合っていなかった。

彼女たちを見ているからこそ、彼女たちを知る友人は今更なのである。

「まぁ、とりあえずおめでとう。これで有川くんの苦労も減ったんじゃない?」

友人の一人が将臣はニヤリと見ると将臣は苦笑を浮かべた。

「まぁな」

「苦労って?」

「あんたは知らなくていいんじゃない?」

「そういうもん?」

「そういうもん」

 

 

そのような経緯があったが望美は例年通り、有川家の男子にあげるチョコについて友人と放課後に話していた。

特に望美は、将臣にあげるチョコについて悩んでいた。

「恋人にあげるチョコってどんなのがいいのかな?」

「手作りとか・・。でもあんたは止めといた方がいいと思うけど・・。やるなら止めないけどね」

望美の料理の腕は壊滅的である。

前にバレンタイン用のチョコケーキを作ったはいいが、チョコケーキ作りに失敗し結局は市販のものを買ったのだ。

「・・他に何かいい案ないかな・・」

望美は友人に助けを求めると、友人はやれやれと机の中から一冊本をだした。

友人が出した本は、よくコンビニでも売っている女の子向けの雑誌だった。

「これでも見て考えれば?」

「う、うん」

「まぁ、有川くんならあんたから貰えるのならなんでもいいと思うけど・・」

「そ、そんなことないよ・・。料理はすんごい否定するし」

「そうでしょうね。とりあえずがんばれば」

このバカップルたちが・・。と内心呆れてはいるが、友人としてはきちんと応援していたのであった。

 

 

家に帰ると、望美は友人から貰った本を開いてみた。

他の女性向けの雑誌と変わらずファッション系の記事があり、次にバレンタイン特集があった。

しかし、中を開ければバレンタインチョコは手作りのものばかりだった。

「やっぱりチョコは手作りかな・・」

望美ははぁ〜と溜息をつくと、ベッドに横たわった。今日ほど料理の腕をもっと上達させて置けばよかったと思うことはない。

「考えても仕方ない!材料買いにいくぞ!」

望美は覚悟を決めると、急いでお店に行くことにした。

 

 

ピンポ~ン。

2月14日の朝に有川家のチャイムがなる。

今日は両親は旅行、譲は部活に行ってしまい家にいるのは将臣だけだった。

バイトもなく、ベッドで横になっていた将臣はしょうがなく出ることにした。

「へいへい、どちらさん?」

将臣がドアを開けると望美がドアの前にいた。

「お、おはよう将臣くん」

「ああ、おはよう・・」

将臣が挨拶をすると、望美は何かいいたそうな様子をしているがなにやら言い出せないようでいた。

「どうかしたのか?」

「ええ〜と・・」

望美がもじもじしていると、将臣は望美が後ろに何か隠しているのが見えた。

「何隠してるんだ?」

「あ!」

将臣は望美が隠しているものをひょいっと取り上げた。

よく見ると、綺麗にラッピングされた小さい包みに何か入っているようだった。

「これは?」

質問され望美の頬が赤くなっていった。

「ば、バレンタインのチョコクッキー・・」

将臣はああっと納得した。

友人がバレンタインがどうのこうのと言っていたのは何となく言っていたが、その時はバイトがあったためろくに気にもしていなかったのだ。

 

将臣が包みのリボンを開けると、中には確かにクッキーが入っていた。

将臣が一つ取り出してみるとそのクッキーは少し焦げていたが、そこにはチョコで文字が書かれていた。

I LOVE YOUと。

「後これ譲くんとおじさんに」

そういうと、望美はバッグの中から別の包みを2個取り出した。

将臣はそれを受け取ったが、ふとあることを思いかまをかけることにした。

「望美。一応聞くがこの文字こっちのクッキーにも書いてあるのか?」

将臣がいたずらっ子のような表情で望美を見ると、望美の顔はますます赤くなっていた。

「どうなんだ〜。望美」

「・・将臣くんのだけだよ・・」

望美が小声だ言うが、その返事はばっちりと将臣に聞こえていた。

「望美、ありがとうな・・」

将臣はそういうと、望美を抱きしめた。

「ちょっと!ここ外!」

望美はばたばたと抵抗をしてみせたが、しばらくして諦めておとなしくなった。

「お前徹夜しただろ」

「う、うん」

望美の目の下には軽くクマができていた。

クッキーを何回も作るのに失敗し、昨日の夜中に完成したのだ。

「・・ホワイト・デーには三倍返しだからね」

望美が表情を見られないように将臣に言うと、彼は優しく微笑みながら望美の髪を撫でた。

「分かったよ。期待しとけ」

望美は頷いた。

その後、クッキーを幸せそうに食べる将臣を見て望美は作って良かったと思う反面、料理を頑張ろうと思うのだった。

 

恋人たちに祝福を。

 

終わり

 

 

後書

バレンタインの季節なのでバレンタインネタで小説書いてみました。

今回はいろいろとハプニングにあい、書くのが遅くなりましたがいかがでしたでしょうか?

お気に召していただければありがたいです。

 

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